契約結婚！一発逆転マニュアル♡
「依舞稀、いったい何度言ったらわかるんだ？」

「すみません。わかってはいるんですけど……」

「いいや、わかってない」

「ごめんなさい……」

「う……。いや、俺も少しムキになりすぎてるのかもしれない。悪かった」

「そんな、遥翔さんは悪くないです。私がいつまでたってもこんなんで……」

「すまん依舞稀。ここまでお前を追い詰めるなんて思っていなかった。もう無理することはないよ。もうやめておこう」

「待ってくださいっ。もう一度チャンスをください」

潤んだ目で懇願する依舞稀を困ったように見つめ、遥翔は小さく溜め息をついた。

正直言って、このことがこんなに依舞稀を悩ませることになろうとは想定外であった。

なんでもそつなくこなす依舞稀であっても、この問題を解決することは無理なのだろうか。

この課題を必死にクリアしようと半泣きになりながら向き合う依舞稀を見つめると、もういいよ、と抱きしめたくなる。

そっと手を伸ばそうとしたとき。

「じゃ、いきますよっ」

依舞稀は胸の前で気合の握り拳を作った。

「は……」

「は？」

「は…………」

「は……？」

「は…………は……」

「……」

「はると……」

「っ！」

依舞稀はそう一言呟くと、両手で顔を覆い、ぽて……とソファーに倒れ込んでしまった。
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