契約結婚!一発逆転マニュアル♡
怯えて入ってきたかと思えば、もうあの強い眼光が自分を捉える。

その代わり身を遥翔は面白いと感じていた。

金に目がくらみ、自分の媚び諂う女しか見てこなかった遥翔にとって、依舞稀の力強い意志のある目は、見慣れたものではなかった。

何故だか依舞稀の目を見ていると、彼女の要求には応えなければならない気になってくるから不思議だ。

俺に飲み込まれまいと必死だな。

そう感じた遥翔は、依舞稀の質問に素直に答えることにした。

「俺は愛妻家にならなくてはならないんだ」

「……は?愛妻家?」

突然何を言い出すのだ、この男は。

思いがけない遥翔の理由に、依舞稀は目を丸くして聞き返した。

「順を追って説明していただけますか?いきなりそんなこと言われても、理解できません」

遥翔のような地位も名誉もあるような男から『愛妻家』というワードを聞くなど、思ってもいなかったし、ハッキリ言って似合わない。

何処をどうすればそんなワードを口にするまでに至ったのか、聞かねば何も判断できないではないか。

まるで遥翔に詰め寄るかのように問うと、サービングカートでコーヒーを淹れていた八神が応接テーブルに依舞稀を促し、「とりあえず落ち着いてください」と依舞稀をフカフカなソファーに座らせた。

遥翔も依舞稀と対面に座り、淹れたてのコーヒーを一口啜った。

「どうして結婚なのか。どうして愛妻家なのか。全部話す」

そう言って遥翔は大きく息を吐いた。
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