契約結婚!一発逆転マニュアル♡
他人に自分の内情を語るのは好きじゃない。

けれど背に腹は代えられないし、依舞稀には他人ではなく身内になってもらわねば困るのだ。

「事の発端は半年前だ」

遥翔は長い足を窮屈そうに組むと、溜め息交じりに語り始めた。

「一年前に、俺の父である社長から会長になったのは知ってるな?」

「もちろんです」

空席になった社長の椅子には副社長である遥翔が座るものだと誰しもが思っていたが、一年たった今も社長ポストは空いたままだ。

それ故に『副社長が社長になれないのには何か原因があるはずだ』と噂話が広がったものだ。

「半年前に、その会長から言われたんだ。そろそろ俺に社長を任せるってな」

「それは……おめでとうございます」

ルックスにも体格にも恵まれ、地位も名誉も、お金さえも持っているとは。

神様というのはどれだけ不公平なのだろうと思ったが、依舞稀は何とか堪えてお祝いの言葉を口にした。

「しかし、だ」

やっと社長職を任せられると喜んだのも束の間。

「就任には条件があると言いやがった」

経営を引退した会長に変わって引き継いだのは遥翔である。

もともと経営は会長である誠之助よりも遥翔の方がセンスが良かった。

ここ数年で一気に有名になったのも、遥翔の腕があったからだ。

それなのに今さら何の条件があるというのか。

今にも不服を口に出しそうな遥翔に対して、誠之助が出した条件とは。

「結婚して愛妻家になれ、ってな」

何とも冗談めいためちゃくちゃな条件だと思ったが、残念ながら誠之助は大真面目だったのだ。
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