契約結婚！一発逆転マニュアル♡
「……本気ですか？」

「冗談でこんなことが言えると思うか？」

「通常ではありえないと思います｝

「俺もそう思う」

「……」

遥翔の真剣な顔を見る限り、この話が作り話であるとは思えなかった。

しかしそれが本当の話だったとして、だ。

それがどうして解雇免除と引き換えに自分と結婚しろという発想になるのだろうか。

「つまり副社長は、ご自分が社長就任するために結婚する必要性があり、その相手を私で済ませてしまおう、というお考えなわけですか？」

「ありていにいうとそういうことだ」

その返事を聞くと、依舞稀の腹の中がぐらぐらと煮えくり返ってきた。

一睡もせずに自分の人生を振り返り、今後のことを真剣に考え、二通りの未来を思い描き、それでも結論など出ずに今に至るというのに。

この副社長はただ社長になりたいという一心で、結婚相手すら適当にきめてしまおうというのか。

人の人生をバカにするにも程がある。

「私……副社長と結婚なんてできません」

依舞稀は声を震わせながらそう言った。

「なんだって？」

「すみません。どうしても無理です」

『無理だ』という答えが出ると、依舞稀の心が少しだけ軽くなった。

どうせこの話を断ってしまえばホテルにもいられなくなるし、もう二度と遥翔と顔を合わせることもない。

開き直って遥翔と目を合わせたが、その目を見た遥翔は依舞稀と正反対のことを思っていた。

絶対この女と結婚してやる、と。
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