契約結婚！一発逆転マニュアル♡
結婚の話はきちんと断ったはずだ。

もちろん契約違反をしていたのは自分だということは理解しているし、それなりの処分なり処罰を受けることは覚悟していた。

しかし……。

これはいったいどういう罰なのか。

依舞稀は日々頭を悩ませていた。

依舞稀の昼休みに合わせて、遥翔はわざわざフロアまで迎えに来る。

初日など、それはそれは大騒ぎになってしまったものだ。

親睦を付加寐る意味合いを兼ねて、と遥翔は毎日依舞稀をランチに誘う。

慌てふためきパニックになっている依舞稀を引き摺るように、始めの三日間は外のレストランで食事をしていたのだが。

「周りを固める必要があるかと」

八神のその一言で、次の日からは社員食堂を遣うようになった。

自分の立場を考え、これだけ自分が依舞稀にアプローチしているのを他社員に見せつけることで、二度目のプロポーズを断りにくくするためだ。

遥翔はいつでもどこでも依舞稀に……というよりは他人に、自分がどれだけ依舞稀が必要なのかをアピールする。

当然契約結婚というワードなど出さず、「君が必要なんだ」「側にいて欲しいんだ」「大切にするから」と、甘い言葉だけを選別して口にする。

「もう……本当にやめてもらっていいですか……」

真っ赤になったり真っ青になったり、顔色や表情をころころ変えながら遥翔との攻防戦を繰り広げている依舞稀を見ていると、やはり本気で落としたいという気持ちが日に日に増していく。

いつの間にか遥翔自身、依舞稀にどうしようもなく固執してしまっていた。
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