契約結婚!一発逆転マニュアル♡
数度のコールで誠之助は遥翔からの電話に出た。

『どうした遥翔。新婚早々、嫁に逃げられたんじゃないだろうな?』

開口一番に父親が息子に言う台詞ではないが、その口調からするにとても機嫌は良さそうだ。

「そんなわけないだろう。今隣にいるよ」

自分の話をしていると察した依舞稀は、緊張がピークになっている。

「今日無事に入籍したよ」

『ああ、おめでとう。ようやく妻帯者だな。母さんも大喜びしてるぞ』

「ありがとう。今からそっちに行ってもいいか?依舞稀を連れていくよ。挨拶させてやってくれ」

遥翔の横でウンウンと頷く依舞稀の姿が可愛くて、まるで小動物のようだと遥翔の頬が緩む。

『ああ……そのことなんだけどな』

先ほどの茶化した口調とは変わり、誠之助は急に真剣な口調になった。

『急遽シンガポールとオーストラリアにホテルの視察に行くことになったんだ。観光も含めて2~3か月滞在しようと思っててな。申し訳ないが今はその準備でバタバタしてるんだ。挨拶はその後ゆっくりでもいいか?』

思いがけない誠之助の言葉に、遥翔は戸惑った。

両親ともに結婚を祝福してくれているが、きちんと挨拶をしたいという依舞稀の気持ちを先延ばしにするのはよくないだろう。

しかし慌ただしく挨拶だけしたところでよくもない。

「わかった。じゃ、挨拶は帰国してから改めて行くよ」

そう言った遥翔を、依舞稀は不安げに見つめた。

まさか自分の挨拶を断られたのではないだろうか。

何処の馬の骨かもわからない女に、大切な息子はあげられません。

身分が違います……みたいな?
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