契約結婚!一発逆転マニュアル♡
『遥翔から結婚すると聞いたときは驚いたけれど、八神からキミに何度フラれてもプロポーズしていたと聞いてね。それが一番の驚きで、一番の歓びだったんだよ』

思わぬ誠之助の言葉に、依舞稀は何と言ったらいいのか分からなくなった。

『遥翔の強引さに押された部分もあるだろうが、キミが遥翔を選んでくれて本当に嬉しいよ。妻も大喜びだ』

まさか本当に喜びの言葉を聞けるとは。

しかし誠之助の言葉はまるで、相手が依舞稀だからこその言葉に聞こえた。

そう思えてしまったのはなぜなのだろうか。

「ありがとうございます。そう言っていただけるとは思いませんでした」

驚くべきことにこの結婚を祝福してくれている誠之助夫婦には、もうこれしか言えなかった。

確かに遥翔の依舞稀に対する気持ちへの期待と、遥翔の人間性に惹かれた部分もあるが、そもそもは打算ありきの結婚である。

それを今後二人で払拭し、本物の夫婦になろうと歩みだしたものだ。

それ故に遥翔の両親からの祝福は、嬉しくもあるが罪悪感もあるものだった。

『せっかく挨拶にということだったみたいだが、申し訳ないことに急遽海外に飛ばなくてはならなくてね。挨拶は帰国後ゆっくりお願いするよ』

「わかりました。お気を付けていってらっしゃいませ」

そう言って依舞稀が遥翔に電話を替わろうとしたとき、『あ、依舞稀さん』と誠之助から声を掛けられた。

「はい」

慌ててスマホを両手で引き戻すと、誠之助は依舞稀に向かってこう言った。

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