契約結婚!一発逆転マニュアル♡
ソファーにふんぞり返って食事の用意が終わるのを待つ、という性格でもおかしくないと勝手に思っていた依舞稀は、遥翔の言動に驚きを隠せない。

あまりにも間の抜けた表情で遥翔を眺めているものだから、心地悪くて仕方がない。

「なんだよ。言いたいことがあれば聞くぞ」

どうせ『らしくない』だの『口だけ』だの、憎まれ口を叩かれるのだろうと思っていたが、依舞稀は遥翔に笑顔を向けた。

「遥翔さん凄いんですね。今までもお手伝いさんとか雇わずに、全部自分でやってたんですか?」

「……ああ。他人に色々と触られるのは好きじゃない」

戸惑いながらそう答えると、「私も昨日までは他人だったんですけどね」と笑った。

「依舞稀はもう俺の妻なんだから、触りまくって構わないぞ。この家のものは全部依舞稀のものだからな。遠慮もなにもする事ないよ」

「今までと違い過ぎて、迂闊になんでも触れませんよ」

「そんなこと気にしなくていい。依舞稀はもう俺の一部になったんだから」

「大袈裟すぎ」

あまりの遥翔に必死さに、依舞稀は吹き出してしまった。

しかし遥翔は内心穏やかではない。

『他人』という言葉でこんなに焦ったことなどあっただろうか。

依舞稀が発する言葉のひとつひとつに反応し、一喜一憂することになろうとは、遥翔自身も思ってもみなかった。

これなら本気で依舞稀を愛することなど、呼吸をするくらいに容易いことかもしれない。
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