片思いのあなたに再会してしまいました
アルコールもそれぞれ3杯目、4杯目に突入し、そこそこに出来上がってきたところで、私は例の話をしてみることにした。

「実はさ、この前コンビニチェーンの担当を引き継いで、エブリデイの担当になったんだけどさ。」

「エブリデイ?すごいじゃん超大手!!」

既に出来上がり気味の沙織は大袈裟に拍手する。
一方で真帆には引っかかるところがあるらしい。
なんとも言いづらそうにしているからきっと先輩のことなんだろうと思う。
彼女たちは普通にサークルの同窓会に参加しているからその中できっと知っているのだろう。

「恭さんにね。会っちゃったんだよね……」

恭さんという我々の中では暗黙の了解で禁句扱いになっている言葉にさすがの沙織も真面目な顔をしている。

「私たちは知ってたんだけど、恭さんがエブリデイに転職したってことはね。だけどまさか詩織がエブリデイの担当になるとは思わないし、会社の中で会うとも思わないし……」

「いや2人は何にも悪くない。同窓会行ってなかったのは私の方だし。なんだけどさぁ……」

急に黙りこくった私を見て2人は顔を見合わせる。ああ、言いづらい。
逆奇跡とも言えるこの状況。
神様はいじわるか。もう!!
私は生ビールをグッとあおるとバンっと思いっきりテーブルに着地させた。

「じ、実は取引先の担当者だったんだよ!」

しばし流れる沈黙。
真帆は固まっている。
沙織に至っては何事もなかったのようにアヒージョのマッシュルームを口に運ぶ、
途中でぽろっと落とした。

「「えええええええ〜〜〜」」

東京のおしゃれなバルに似つかわぬ女の絶叫×2がこだました。
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