片思いのあなたに再会してしまいました

本社勤務となってから2週間が経った。

大学が東京だったからある程度慣れてはいたはずだったが、地方での5年間というブランクがあるためか東京での暮らしは初めは慣れないことだらけだった。
大学のときは実家暮らしだったし、東京での一人暮らしははじめて。
物価の違いやゴミ出しの習慣、夜の一人歩きなど様々な感覚の違いから疲れは溜まっていく一方である。
しかし仕事は面白い。
毎日新しい発見があって、やりがいだらけ。
今日ははじめて商談に連れて行ってもらう。

「石田さんにはしばらくしたら私の担当先を引き継いでもらうことになるから、そのつもりでよろしくね。もちろんフォローはするわ!」

先輩の日野さんは今年で32歳になる。
バリバリの営業ウーマンとして大手コンビニチェーンを相手に多くの契約を勝ち取ってきたやり手である。
しかし1ヶ月後から産休を取ることになっているため、私がその仕事を引き継ぐごとになったのである。

「エブリデイって本当に大手じゃないですか。新人の私なんかで大丈夫でしょうか……」

「だーいじょーぶよ!相手の事業規模なんて関係ない。石田さんが今までやってきたように目の前のひとりの取引先として真摯に向き合うだけ!
それに取引の窓口が違うだけで、グループ全員がエブリデイと仕事してるんだから、みんな助けてくれるわ。」

日野さんはにこりと笑いながら私の肩をポンポンと叩いた。
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