片思いのあなたに再会してしまいました
いったん自分のオフィスに戻り、商談についての報告を済ませ、しっかりと定時で退社した。

『これから恭さんと飲みに行く。』

そんな爆弾を真帆と沙織とのLINEグループに投下したところ、それはたいそう荒れていた。
これは近日中に再び女子会が招集されるな。

恭さんとはお互いのオフィスの中間にある新宿駅で待ち合わせている。
先程退社したという連絡があったため、彼もそろそろ到着する

恭さんのことが大好きで、でも伝えられなかったあの悔しさや苦しさは絶対に忘れられない。
それをもう昔の話だよ、なんで片づけられるほど私は大人じゃないのだ。
そんな中で何を話せばいいのか。

彼はなぜ同窓会に来なかったのか、なんて核心をつく質問をしてくるかもしれない。
そのとき私はちゃんと誤魔化せるだろうか。

地方勤務だから、なかなか行けなくて。

それが私の答えだけど、でも彼にはこれは通じない気がするんだよな。
実際お正月とか全然行けるときもあったし。
さらに極め付けの質問があるのだ。
それについて聞かれてしまったら、私はもうはぐらかせないんじゃないかな。

そんなことを考えていると後ろから肩を叩かれ、恭さんが人懐こい笑みを浮かべて立っていた。

やって来たのは学生時代によく利用していた居酒屋だった。
懐かしいな、ということで入店したのだが、安さと落ち着かなさは変わっていなくて、安心した。
それに騒がしい店内はなんだか私の諸々をごまかしてくれるような気がして、今日はかえってこれが落ち着くと感じた。

お互い生ビールを注文し乾杯をした。
先輩とご飯行った時はカシオレとか飲んでたなと思いつつ生ビールをごくごくと流し込んだ。

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