片思いのあなたに再会してしまいました
そしてその援護射撃をするように真帆は続けた。

「私もそう思うかも。実際恭さんのことで詩織はずっと苦しんできたし。はっきり言うと可能性も薄いような気がして。
それに新しい恋愛で前を向けば、今までみたいに恭さんへの気持ちを見ないふりするんじゃなくて、ちゃんと忘れらるんじゃないかと思うの。」

真帆に言われて私はハッとした。
そうか、私6年前からずっと恭さんへのいろんな感情が入り混じった思いを見ないふりして、蓋をしていただけだった。
でもそれって本質は変わらない。ずっと抱えているということに変わりはない。
これから前を向いて、恭さんとはビジネスパートナーとして向き合うと決めた今、このままじゃいけないと思っている。
蓋するだけじゃなくて、ちゃんと捨てて忘れないと。

「うん、そうだね、なんかわかった気がする。
だけどこれってバリバリ私の私情で、そのためだけに片倉さんとお付き合いするのはなんか不誠実な気がする。」

「詩織は真面目過ぎ!恋愛なんてそういう計算込みの駆け引きなんだから。結果として相手のことを大切に思えるようになればいいのよ。」

そう言って沙織は豪快に焼き鳥を食べ、

「私だって実はこっそり何人かキープしちゃってたことあるもの。」

と小声で告げた。

「沙織、あんた強かな女になったねぇ。」

真帆がじとっとした目で隣の沙織を見ると、沙織はテヘッとおどけて見せた。
私はそんな2人の様子にただひたすら笑って、そして金曜の夜は過ぎていった。
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