片思いのあなたに再会してしまいました

女子会を経て私の心境にも少し変化が訪れたこともあって、あれほど集中できず悩んでいた仕事もすこぶる順調だった。

あれからしばらくして片倉さんにお返事をした。
まだ好きとかそう言う感情はわからないけれど、これから知っていきたいというニュアンスで正直に告げたところ、ありがとう、嬉しいよとの言葉をもらい私たちはお付き合いを始めた。
と言ってもまだ私の感情も不安定、それに片倉さんだってちょっといいな、と思っている程度だから、まずはお互いを知るところからということで仕事が早く終わった日に食事に行く程度だ。

仕事も順調、プライベートもそこそこということもあり私は落ち着きを取り戻し、ついに日野さんが産休に入り2人きりになってしまった恭さんとの商談も緊張はするものの上手くやれるようになってきていた。

「では食材については弊社のこのサンプル品を改良していくという形でいいですかね。」

「はい、それでいいと思います。あと気になる点としてうちの衛生基準の目安がこの資料の通りなんですけど、大丈夫ですかね?生産のほうはグループ会社さんだからすり合わせしたほうがいいかと思いまして。」

「そうですね、大丈夫だとは思うんですが、生産チームと連携して確認進めておきます。」

キャンペーン商品も形になってきており、8月初めのコンペに向けて順調に良いものが仕上がってきている。
最初は不安だったけれど、今ではしっかりと信頼関係を築けている。
まだ完全に吹っ切れたわけじゃなく、いまだに少し苦しいと思う時はあるけれどだいぶマシになってきた。
やはり最初は突然の再会という事態に困惑して心も身体もついていけなかったんだと今では思っている。
あれから恭さんも過去の話を蒸し返すようなことは聞いてこないし。

「それでは、本日はここまででということで。」
「はい、ありがとうございました。柴田さん、今後ともよろしくお願いいたします。」

私はぺこりと一礼して会議室を出た。
だからその後恭さんが、柴田さんか……と切なげに呟いていたことなんて知る由もなかった。
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