片思いのあなたに再会してしまいました

「お前ら、一緒に仕事してるんだろ!面白そうだから色々話聞かせてよ〜」

サークルのガヤ担当だった三上先輩の計らいによる席決めだったか。
おかしい、私は沙織と真帆以外の誰にも言ってないぞ。
それに恭さんも無闇にベラベラと話したりする人じゃない。
すると私のスマホから着信音が鳴り、画面を見ると沙織から

『ごめん、つい口が滑った』

というメッセージがくまのマスコットが土下座しているスタンプと共に送られてきた。
おのれ、沙織め。覚えてろよ!
私は沙織の方を見ると思いっきり睨みつけた。

「そんな〜何も面白いことなんてないですよ〜ただ偶然取引先の担当者同士だったってだけで、普通にお仕事してるだけですよ〜ねえ恭さん?」
「あ、うん。そうだね。」

そんな当たり障りのない回答を続けて質問攻めをのらりくらりと交わし、みんなの注目が他の話題に移るのを待った。
すると皆それぞれ職場の愚痴や昔の思い出話などに花を咲かせ始めた。

私も隣に座っていた後輩のりこちゃんと話し込んでいたが彼女がお手洗いに行ってしまい手持ち無沙汰になる。
そしてタイミング悪く反対側の隣、恭さんも話題が切れたらしくビールを飲んでいる。

きまず……

しかしここだけ話が盛り上がっていないというのもかえって浮くので勇気を出して私から話しかけた。

「あ、あの柴田さん。コンペの件、本当に色々とありがとうございました。」

急にビジネスモードで話しかけられたためか恭さんは驚いていたが、同じくビジネス対応で
いえ、こちらこそと返された。
そして言うか言うまいが迷ってはいたが、社会人として謝罪はしなければと思い、祝勝会の件についても触れることにした。
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