片思いのあなたに再会してしまいました
「あの、祝勝会の件では色々と気を使わせてしまってすみませんでした。
お仕事のお相手として誘ってもらってるとはわかっていたんですが……」

そう言うと恭さんはわずかに顔を歪めた気がしたが、すぐに元の表情に戻って
そんなに謝っていただく必要なんてないですよとにこやかに返された。

次に何を話そうかと迷っているとちょうどタイミング良く料理が届いたため、会話は途切れた。
祝勝会の件についてひとまずは解決できたが、依然としてモヤモヤする気持ちは残っている。

その後は特に何事もなく時間は過ぎ、平和なまま会は終わるだろうと思っていた。
しかしそんな時こそ事件は起こるものだ。

廊下側の席で沙織と真帆と話していたときのことだった。

「あれ、詩織。」

不意に名前を背後から呼ばれて振り返ると、そこにはなんと片倉さんが立っていた。

「か、片倉さん。どうしてここに？偶然ですか？」
「うん友人と飲んでて。詩織はなんかの集まり？同窓会とか？」

片倉さんがいるという状況に本当に驚きつつ、サークルの同窓会だと知らせると、ああついに会えたんだねと彼は笑った。
サークルのことに関してはよく片倉さんとの食事の際にお話ししていたのである。

彼とひとしきり話し終えると彼は私と話し込んでいた沙織と真帆にペコリと挨拶をしてその場を去ろうとした。しかし何かをふと思い出したようで私の肩をトントンと叩くと

「この前言ってたご褒美の話、覚えてるでしょ？お盆中に空いてる日あったら出かけようね。デートしよう。」

片倉さんはにこりと笑ってそう言うと私に手を振ってお店を出て行った。

しばらく私と片倉さんに注目が集まっていたが騒がしい居酒屋の店内で我々の会話はみんなには聞こえなかっただろう。
しかし近くにいた沙織や真帆、そして恭さんには聞こえていたはずだった。
そして恭さんは同じくエブリデイ担当の片倉さんのことを知っている。
そして私が以前彼に食事に誘われていたことも。
詩織と私を名前で呼び、デートをしようと言う片倉さんを見て、きっと恭さんは私の彼氏が誰かということに気が付いただろう。

恭さんに彼氏が片倉さんだと知られてしまった。
なぜかそのことにひどく焦燥感を覚える。

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