片思いのあなたに再会してしまいました

衝撃的な告白ののち、私が何も言わなかったため、彼は全部後から恭平に聞いた話だけど、と前置いてゆっくりと昔のことを話し始めた。



私が大学2年生、恭さんと槙が大学3年生のとき、私は恭さんに想いを寄せて懸命にアプローチをしていた。
敏感な方ではない恭さんもさすがに私が自分に好意を持っているということに気が付いた。
当時私のことは後輩の1人としか見ていなかったが、年下の女の子がこうして自分に好意を寄せてくれるということは満更でもなく、次第に気持ちは傾いていったらしい。
しかしこのタイミングで、槙さんから私のことが好きだということを聞かされた。


「当時の俺はそこまで意識していたつもりはなかったんだけど、今思えば石田と恭平のことになんとなか勘付いて牽制しようとしたのかもしれない。」

槙は自嘲するように呟いた。

恭さんは優しかった。
だから少しいいかもと思っている程度の自分が槙を差し置いて私と付き合うことなんてできないと思ったらしい。
しかしこれ以上は誘わないでくれと私に告げることもできず、ただ宙ぶらりんな状態が続いた。
思いを告げることも、振ることもできない自分が不甲斐ないと自己嫌悪に陥ったらしい。

そして結局私は恭さんに思いを告げられないまま、彼は卒業して私たちは離れ離れになった。
追い出しコンパの日かな私は泣いて崩れ落ちたけれど、恭さんも影で泣いていたらしい。

「あいつは俺の気持ちを知ってたから、何もできなかった。本当に申し訳ないと後悔してる。」

「違います、槙さん。結局勇気がなくて思いを伝えられなかった私が悪かったんです。」

両者とも自分が悪かったと言ってキリがなさそうだったのでそれ以上お互い言及しなかったが、槙さんは卒業後の恭さんの様子についても教えてくれた。

恭さんは会社に入ってしばらくした後病気をしたらしい。
健康診断で引っかかって、しばらくの間入院を余儀なくされた。
おそらく私がフタバフーズに入社が決まったと報告のメールをした時がそのタイミングであったのだろう。


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