片思いのあなたに再会してしまいました
そのあとはほとんど記憶にない。
手帳に残されたメモが、かろうじて仕事に関する重要事項だけはとりこぼさないでいたことを示していたものの、きっと後任の宮下さんはなんだかぼんやりした人だなと幸先に不安を覚えたのではないだろうか。

恭さんは、どんな顔をしていたかな。
私は怖くてあなたの顔を見れなかったよ。
仕事を投げ出すことに悔しさをにじませる顔?
ここまで散々振り回した私にざまあみろって顔?
それならいいよ、全然いい。
だけど、また何もできなくてごめんってそんな顔をしていたら一番辛い。
でも、きっと彼はそんな顔をしてたんだと思う。

ここまで逃げて来たからそのツケが来たんだな。
もう私たちに残された時間はわずかだ。



いつもの如く女子会が開催されたが、今日の会場は私の家だ。
もし普通の居酒屋でやったら人目をはばからず泣きまくってしまう気がしたためである。

彼女たちとは同窓会以来会っていなかったため、今日の話題は片倉さんとのデートの話だと思ってやって来たと思われる。
しかし私の顔を見た途端に幸せの絶頂どころか正反対のようだと察したようである。

私は彼女たちに槙さんに聞いた話、自分がたどり着いた恭さんへの想い、そして彼がもういなくなってしまうことを話した。
私は案の定途中から涙が止まらなくて、その様子を見て2人ももらい泣きをしたようだった。

「わ、私今まで恭さんのこと勘違いして。いろんな事情があったのに……。私もちゃんと謝りたいな。」

「でも、詩織。ちゃんと答えが出せてよかったね。」

「答えは出たけど、まさかこんなことになっちゃうなんて。今まで逃げて来たツケが来たの。」

そう言って私が俯くと、2人も悲しそうな様子で沈黙が訪れた。

しかし真帆が長い沈黙を破った。

「詩織、確かに2人に将来はないかもしれないけど、想いを伝えることだけならどんなに残された時間が短くてもできるよ。」
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