片思いのあなたに再会してしまいました
恭さんに操を立ててるとか、そんなつもりは全くないが、どうしても好きになれない。

「やっぱり、またな、が忘れられないのかなぁ」

私は自宅で熱いお湯に浸かりながらひとりごとを呟いた。

あれから何度か電話をしたりはした。
しかし時差もあるし、お互い忙しいこともあり遠慮してしまい徐々にその回数は減っていった。
そして極め付けは私の携帯が壊れたことだった。
ある日突然フリーズして動かなくなり、バックアップも取っていなかったためにすべての連絡先がわからなくなってしまったのだ。
槙さんに聞くとか、色々方法はあったけれど、これもそういう運命なのかなとなんとなく思って諦めた。

空港での別れの後、やはりしばらくはかなり落ち込んで泣くことも多かったし、恭さんが残した、
またなの言葉にすがるように日々を過ごしたけれど……
秋になり彼と取り組んできた企画が実施され、店頭に2人で考え抜いた商品が並んだときになんだか吹っ切れたような気がした。
それからは恭さんは大切な思い出として向き合って生きていけていると思っていたが……

やはり19から28まで拗らせた片思いの威力は侮れないなぁ。
私は半ば諦めの気持ちを抱き、自分に苦笑いをしながらお風呂から上がり、缶ビールをプシュッと開けて思いきりあおった。

テレビをつけるとビジネス経済番組がやっておりエブリデイの紹介をしていた。
そのまま何気なしに見ていると、海外展開への成功というトピックスに突入し、恭さんがいる北米市場の紹介がされた。
ちゃんと成功しているんだな。
遠く海の向こうにいる彼が頑張っている姿を想像して、私もまた頑張ろうと決意した。
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