片思いのあなたに再会してしまいました

いつものようにデスクで提案書類を作成していると、課長から声をかけられた。

「石田さん、ちょっとミーティングルーム2に来てくれる?話があるんだ。」

課長は血気盛んな営業マンが多い私の部署をまとめ上げているにもかかわらず、本人は至って穏やかな人だ。
年齢的にはお父さんくらいの歳だけれど、まるで優しいおじいちゃんという感じでみんなから好かれている。
しかし仕事はできる切れ者だから侮れない。

私は課長に連れられてミーティングルームに入るとそこには懐かしい人がいた。

「片倉さん!お久しぶりです!」

「久しぶり、石田さん。この前のカフェの提案大成功みたいだね。おめでとう。」

「ありがとうございます!ここに来たばっかりのときに片倉さんに沢山鍛えられたので!」

片倉さんとはあんなことがあったにも関わらず、その後の関係性に全く影響がなかった。
あまりにも普通すぎて、全て自分の夢だったんじゃないかと一瞬疑うほどだった。

片倉さんとは2年間一緒に仕事をしたが、その後彼は営業戦略企画に移動となった。
彼はそこでもその優秀さを発揮しており、お噂はかねがねどころではない活躍ぶりである。

部署自体は同じ東京本社にあるが、フロアが異なるため顔を合わせることはほとんどなく、本当に会うのは久しぶりである。
そんな彼がどうしてここにいるのだろうか。
< 57 / 60 >

この作品をシェア

pagetop