片思いのあなたに再会してしまいました

アラームの音が鳴り響いて、モゾモゾと動いたあと手を伸ばして停止ボタンを押す。

ああ、なんと目覚めの悪いことか。
柴田恭平と再会したことで大学時代の初恋のことを思い出してしまった。
私の甘酸っぱく、そして何よりも苦しい初恋の思い出である。

昔は遅刻ギリギリまで寝ていることがほとんどだったけど、年齢を重ねるうちに早起きも苦痛ではなくなった。
しっかりと余裕を持って起きて、メールをチェックをするぐらいの時間はある。

フォルダを開き、ざっとチェックをする。
柴田からは……きていないか。
そう考えてしまった自分が嫌だった。
昨日蓋をすると決めたばかりなのに。
再会した懐かしい後輩にメールをくれるかななんて、期待した自分が心底嫌。
そしてお久しぶりです!なんて連絡をすれば可愛げがあったかな、なんて考えてしまった自分も。

私はベッドに携帯を投げて、準備を始めた。
髪の毛は大学時代からずっとショートカット 。
結べないからしっかりとセットしなければいけない。
ヘアアイロンと格闘した後に、トーストをかじりながらスマホを再び見ると、LINEが届いていた。

『やっほ〜久々。
詩織東京勤務始まったんだって?
今日金曜だし集まって飲もうよ〜
もう仕事は言い訳にできないわよ?』

大学以来の友人である真帆と沙織とのグループ。
彼女たちは同じサークル所属で誰よりも仲が良かった。
そして私の事情をちゃんと知っている人物。
就職後3人だけで女子会をしたこともあったけれど、私が地方にいることや真帆が結婚して子供もいることなどから最近はめっきり回数が減っていた。

『久々、元気だった?
沙織はいいけど、真帆はお子ちゃん平気なの?
私も残業は今のところないから平気だけど。』
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