貴方の彼女になれますか
次の日の日曜日はバイトに向かった。店長に昨日のことを謝るとすごく体を心配された。佐々木、どこまで重症だと話したんだか…
月曜日、いつもの電車に揺られて同じ景色を見つめて、今日は翔に勧めてもらった洋楽は聴けなかった。人の空く駅で、1つ隣の車両に翔を見つけた。どうしていいのか分からず気付かないふりをした。翔も、こちらに来たりはしなかった。
学校の最寄りでホームに降りると少し間を置いて彼の背中を追った。駆け寄ってその距離を詰めることが出来ない。人混みの改札を抜けると、その隣に佐々木が加わったのが見えた。いつもみたいに笑って話す2人に羨ましさを感じる。
教室まで行くと、いつもの後ろの席に2人が座ってた。いつもの順番で、私の座る真ん中の席を開けて。
[あ、おはよ彩!]
『はよ』
「…おはよ、」
いつもより大袈裟に明るい佐々木と、いつもと何も変わらない翔。え、あれは夢だった?そう思わせるほど動揺を見せるのは私だけ。
『同じ電車だった?』
「そう、かも」
『探せばよかった』
そういえばね、彩に聴いてほしい曲見つけて…なんて、本当にあの夜のことがなかったかのように繰り広げられる日常に、佐々木も目を見開いてた。
「あ、この前のノート、返すね、」
金曜の講義で借りたままだったノート。それと一緒に差し出した、いつもと同じ、お礼。『いつものやつ』って笑って受け取ってくれたチョコレート。
何もかもが、変わっていなかった。