貴方の彼女になれますか
「佐々木はさ、そういう話ないの?」
彩にそう聞かれたこともあった。
でも、俺は画面の中かな~!なんてふざけた。
先輩は俺の憧れで、多分、これからも先輩にとっては後輩でしかない。
だから、元気で明るい後輩でいるんだ。
[あ、せんぱーーーい!]
〈佐々木くん!〉
彩の隣で、見つけた先輩に手を大きく振れば、先輩も返してくれて、彩は小さくお辞儀をした。
その隣にいる男に気づいて、胸が締め付けられた。
高身長で、足が長くて、彼女をあんな笑顔にさせられるその人に、俺は到底なれなくて。
「…佐々木?」
[ん?]
「…なんでもない。帰ろ?」
[帰ろー]
[翔は?]
「バイトだって先帰った」
[寂しい?]
「そんなんじゃないけど!」
ちょっとだけ口を尖らせる彩が可愛い、なんて思ったのは口に出さずに胸に秘めた。
好きな女の子に想われるのって、どんな気持ちだろう。
翔が少しだけ、羨ましく思った。