出逢いがしらに恋をして
 そんなことを考えながら、駅までの道を歩いていると、
 後ろから「高橋さん」と声をかけられた。

 振り返ると、なんと宮沢さん。

 少し息を弾ませている。

 まさに彼のことを考えている最中に現れるなんて。

 え、もしかして、まぼろし?

 でも彼は消えてしまうことなく、乱れた前髪をかきあげながら、話しかけてきた。

 本物だ……

「歩くの速いね。前にいるのが見えたから追いかけてきたんだけど。
 地下鉄? 駅まで一緒に行ってもいい?」

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