出逢いがしらに恋をして
「どういたしまして」と耳に心地よく低音の声が響いた。

 改めて、その人に目を向けたとたん、心臓が高鳴った。

 見上げるほど長身のイケメンがにっこりと微笑んでいたのだ。

 日本人離れした、ギリシャ彫刻もしくはハリウッドのセレブ俳優と見まごうほどの、
 彫りの深い顔立ち。
 髪の色は漆黒。
 センターパートの、緩くパーマのかかった少し長めの前髪が、秀でた額を引き立てている。
 すんなりと伸びた長い手脚。目を見張るほど腰の位置が高い。
 そして、渋い茶系のスーツをモデル並みに着こなしている。

 正真正銘、掛値なしのイケメンだ。

 こんな男性とおよそ45秒間、この狭い空間にふたりきりなんて。

 なんだか意識してしまって、身体中の神経がむき出しになったみたいに緊張する。
 
 心臓の音が聞こえちゃったらどうしよう。
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