出逢いがしらに恋をして
「いや、店舗候補にあがってるカフェに、お忍びで視察に行きたいと思ってるんだけど。
女性の意見も訊きたいし、もし次の日曜、予定がなければ、一緒に行ってもらえないかな」

 あっ、付き合うって、そっちの意味ね。当たり前か。

 わたしは考える前に条件反射的に返事をしていた。

「はい。まったく予定ないんで、大丈夫です」

「良かった。日曜日のカフェに男ひとりで行くのもちょっと気がひけてさ」

 ん? でも、他に一緒に行く人、いくらでもいるんじゃないかな?

 例えば、亜矢美さん、とか。

 わたしでいいんですかって訊こうと思った寸前、

「じゃ、LINE交換しとこか」
 とにっこり微笑まれてしまい、催眠術にかかったようにコクリとうなずいていた。

 いやいやいやいや。
 
 思いっきり自分に突っ込んだ。

 この状況で断るなんて、そんなもったいないことしたら、一生後悔するに決まってるって。
< 33 / 99 >

この作品をシェア

pagetop