出逢いがしらに恋をして
「子どものころ、キリスト教系の幼稚園に通ってて、
バザーのときにおいしいクッキーとかパウンドケーキを売っていたんです。
後で知ったんですけど、それが福祉作業所で作られたものだったんですよね。
でも、普段買おうと思っても、なかなか売ってなくて。だから……」

「それをモールで扱う」

「はい。カフェも併設で。既存のイメージを打破するような素敵なものにして。
そうしたら多様性を重視するっていうモールのコンセプトにも合うんじゃないかな……と」

 宮沢さんは顎に手を当てて目を閉じて、少しの間考えていた。

「うん。そういう発想はなかった。考える価値はありそうだな」

「ええ。それに社の直営にすれば、障がい者雇用もクリアできますよね」

「なるほど。うん、行けるかも。よし、じゃあ、ひよりちゃん。それ、企画書にしてくれる?」
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