出逢いがしらに恋をして
 部長は、30㎝ほど身長差のある宮沢さんを見上げて

「アメリカの大学院を出た本社期待のホープだ。
 短い間だとは思うが、彼からいろいろ貪欲に吸収するように。
 こら、高橋。いつまで、そんなとこで突っ立ってるんだ。
 早く荷物を置いて、宮沢くんにフロアを案内してやってくれ」

 ドアのところで呆けていたわたしは、突然話を振られてあわてて答えた。

 「は、はい」

 そんなわたしに彼は視線を投げかけ、軽く目で合図をくれた。

 さっきはどうも的に。

 その眼差しだけで昇天してしまいそうだった。
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