出逢いがしらに恋をして
 ふざけてパンチをし合っているわたしたちのほうを見て、
宮沢さんは一瞬、目を見張った。

 それから、「ただいま」とだけ言って、踵を返して自分の席に戻った。

「珍しく愛想なかったね、マネージャー。
あれっ、実は高橋さんに気があるんじゃないの? 
ちょっと嫉妬混じってたよ、今の目つき」
 と坂上くん。

「そんなことあるわけないでしょう。気のせいだよ」

 坂上くんは、いや、こういう勘は鋭いほうなんだけどと言いながら

「じゃあ、賭けようよ。下のコンビニのハーゲンダッツ」

「いいけど。どうせわたしが勝つに決まってるから」

 期間限定の一番高いやつ、おごってもらおう。

 しかし……勝ってもひとつも嬉しくない賭けだな。

 そんな、宮沢さんが嫉妬なんて……ないない、絶対ない。

< 62 / 99 >

この作品をシェア

pagetop