出逢いがしらに恋をして
「そうは思うんですけど、やっぱり皆さんの前で発表することを考えると……」

 だいたい、小学生のときから、人前で話すのは苦手だった。

 ここまできて、いまさらだけど。

「あのさ、ちょっと考え方を変えてごらん。
自分の考えたことが実現するかもって思ったら、ワクワクしない?」

「ワクワク、ですか?」

「そう。俺はいつも、企画が実現したときのことを思い浮かべながらプレゼンするんだ。
自分のふとした思いつきが現実になるなんて、すごいことだって」

 うーん。そんな境地にはとてもなれそうにないけど。

「今回のきみの企画はさ、頭の固い連中や金儲けしか考えてない連中からは
到底出てこないものだよ。だから、俺はなんとしても実現させたいと思ったんだ。
そのために俺たちふたりで、何時間も費やしてきたんじゃないか。大丈夫。俺を信じて」

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