出逢いがしらに恋をして
「違います。わたしが好きなのは……」

 わたしは自分から彼の胸に頭を預けて、ささやいた。

「あなたです」

 そして、自分から彼の背に腕を回した。

「マネージャーが大好きです」

「ひより……」

 感極まったようにささやくと、彼は思い切りわたしを抱きしめた。

 息ができないほど。

 骨が軋むほど。
 
 この温もりを知ってしまったら、もう後戻りはできない。

 そう思って、わたしは言った。

「出会ったときから、毎日あなたのことばかり考えてました。でも、亜矢美さんとお付き合いされてることを知って諦めないといけないと思ってました。でも……」
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