出逢いがしらに恋をして
第6章
 会社から、一旦家に戻り、宮沢さんが住む駒沢大学の駅前で待ち合わせた。

 帰り際「明日、会社に行ける格好で来て」とささやかれたときは、
心臓が飛び出しそうになった。

 えっとー、それって、やっぱり、そういうことだよね。

 しばらく歩いて到着した店は、住宅地にある1日1組限定の隠れ家レストランだった。

「オーナーが古くからの知り合いなんだ。今日は定休日だったんだけど、無理やり開けてもらって」

 挨拶に出てきてくれた、40歳がらみのオーナーシェフは、柔和な顔で微笑んだ。

「ジュリオから電話があって、大切な人を連れていくっていうから人肌脱ごうと思ってね。でも、急な話だったから、たいしたものはお出しできませんが」

「いえ、こちらこそ、お休みなのに開けていただいてありがとうございます」

 シェフはごゆっくり、と言って厨房に戻っていった。

 大切な人……。本当にそんなことを言ってくれたのかな。

 もう、ワインを飲む前から顔が火照ってくる。
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