出逢いがしらに恋をして
 そのとき、厨房の奥からシェフがワゴンで運んでくる音が聞こえてきた。

 テーブルに横付けされたワゴンを見たわたしは

「わーっ、すごい」と思わず、声を上げた。

 それは小ぶりのホールケーキで、

 天使の羽を模した繊細な飴細工とふわふわに削られたホワイトチョコレートで
デコレーションされていた。

 まるで夢に出てくるような、幻想的なケーキ。

 こんなのはじめて。

 喜ぶわたしに満足そうな表情をうかべ、彼は言った。

「ここのシェフはもともとパティシエなんだ」

「ジュリオが、あなたはとても可愛らしい方だと言っていたので、
それでイメージしたんですよ。お会いしたら、思ったとおりの方でしたよ」
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