出逢いがしらに恋をして
「食べるのがもったいないです。こんな、綺麗なケーキ」

「そんなこと言わないでよ。
ひよりがほっぺたを落としそうな顔で食べるのを、楽しみにしてたんだから」

 シェフはその場でケーキを切り分け、さらに美しくお皿に盛り付けてくれた。

「少しフライングだけど、誕生日おめでとう」

「こんな素敵な誕生日を過ごすのは、生まれてはじめてです」

 わたしがそう言うと、宮沢さんはぞくっとするほど色気を含んだ目でわたしを見つめた。

「これから毎年、こういう日を過ごすんだよ。
ひよりの誕生日で、俺たちが付き合いはじめた記念日だ」

 ケーキより数十倍甘い、その言葉。

 目眩がするほど嬉しかった……

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