出逢いがしらに恋をして
***

「どうぞ」

 宮沢さんに先に入るように促される。

 彼の部屋はさっきのレストランから5分ほど歩いたところにある瀟洒なマンションだった。

 隣の駅に住んでいると言っても、築40年のわたしのアパートとは雲泥の差だ。

「そこに坐って」

 そう言って、彼はリビングの革張りのソファーを指さした。

 それから冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを注いだグラスを持ってきてくれた。

「だいぶ顔が赤いから、水のほうがいいかと思って」

「ありがとうございます」と言って、

 グラスに口をつけた。
 
 冷え切った水が喉をすべっていくのが心地よい。
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