出逢いがしらに恋をして
 彼の腕がわたしの肩に回り、抱きよせられて唇を奪われ、
そのあとの言葉は、彼の唇に飲み込まれた。

 一度離して、またすぐ重なる。

 唇が重なるたび、心の渇きが癒えていく。

 水で冷やされた口内が、またすぐに熱を帯びる。

「可愛いよ、俺のひより……」

 彼はおもむろに立ち上がると、わたしに腕を回し、抱きあげた。

「きゃっ」

 身体が宙に浮き、その頼りなさに驚き、わたしは彼の首に手を回した。

「お、重たくないですか?」

「ぜんぜん」
 
 彼は口づけを繰りかえしながら、足で乱暴に寝室の扉を開け、
わたしをそっとベッドに横たえた。
< 96 / 99 >

この作品をシェア

pagetop