出逢いがしらに恋をして
「ひより……」

 彼の手が、わたしのサマーセーターの裾にかかり、忙しなくたくしあげる。

 お互いに一矢纏わぬ姿になり、彼の重みを全身で受け止めたとき、
これ以上ないほどの幸福感に満たされた。。

「マネージャー……」

  彼は片肘ついて微笑み、わたしの唇に人差し指を当てた。

「こら、マネージャーじゃないだろ」

そうして、また、唇を貪られる。

 散々、わたしの唇を蹂躙|《じゅうりん》したあと、

 その唇は、首筋から鎖骨へと下りていく。

 敏感になった身体のあちこちに彼の唇や指が触れるたび、
はしたなく声をあげそうになって、唇を噛んだ。

 その様子に気づいた彼は、「声を聞かせて」と彼が耳元で囁いた。

 その言葉でタガが外れたわたしは、もう喘ぐ声を抑えられなくなってしまった。

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