出逢いがしらに恋をして
 そして……

 彼がわたしの中に入ってきたとき、

 細胞の隅々まで歓びに満たされ、うねるような快楽に襲われた。

 わたしはそれまで、閉じていた目をそっと開いた。

 わたしの目に、眉根を寄せて、快楽に耐えている彼の顔が映る。

 ああ、本当にこの人に愛されているんだ。

「好き……です。……好き」

わたしは、そう、うわ言のように繰り返していた。

「ひより……」

 彼の動きが烈しさを増す。

 そして、最後の時を迎えて……


 ふたりとも、しばらく動くことが出来なかった。
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