レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「だからってわけじゃないけど,俺は姫様に想いを伝えるつもりはない。姫様はいつも,俺達国民のためにお心を砕いて下さってる。俺は,そんな姫様のお心を掻き乱すようなことはしたくないから」
「ったく,カタブツなお前らしい理屈(りくつ)だぜ。でもな,リディアはお前から直接聞きたがってるんだ。アイツにとってはお前も,大切な幼なじみなんだから」
デニスの思わぬ言葉に,ジョンは目を瞠った。それでも,彼は(かたく)なだ。
「……でも俺は,姫様に想いは伝えない。忠誠心が,俺なりの姫様への愛情だ。姫様に忠義を尽くして,陰ながらお守りすることこそが,俺なりの愛し方なんだよ」
「ああ,そうかい!勝手にしろよなっ!」
デニスはもう、ジョンの理詰(りづ)めにはウンザリしていた。捨て台詞を吐いて,さっさと寝部屋へ行こうとするけれど。
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