レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「だって,もったいないだろ?あっ,菓子も頂くぜ」
今度は,客人が手もつけなかった焼き菓子の皿に手を伸ばし,美味しそうにバリボリ頬張り始めたデニスに,再び椅子に座ったリディアは,肘掛けに頬杖をついて「呆れた」と呟く。
「まったく……。給金も,宿舎の食事も充分足りているはずなんだけど。あなたのその食い意地の悪さは相変わらずね」
「?」
コメカミを押さえるリディアに,デニスは首を傾げた。
「……いいえ,何でもないわ」
デニスやジョンのように,城に仕える若い兵士達は,城の敷地内に建てられている宿舎で共同生活をしているのだ。有事の際に思う存分力を発揮してもらえるよう,兵士には毎日,充分な量の食事が提供されているはずである。デニスには,それでは不足なのだろうか?
思えば彼は,リディアの知る限り幼い頃から食い意地が張っていた。
城での茶会に招いた時も,当時まだ七歳だったデニスは他の子供の分の(それも,自分よりも幼い子の,だ)菓子まで食べたがっていたし。三組の親子連れで湖のほとりまで遠出した時だって,当時十一歳で食べ盛りだった彼は,誰よりも弁当を食べたがっていた記憶がある。食欲旺盛なところは,十八歳になる今も健在のようだ。
今度は,客人が手もつけなかった焼き菓子の皿に手を伸ばし,美味しそうにバリボリ頬張り始めたデニスに,再び椅子に座ったリディアは,肘掛けに頬杖をついて「呆れた」と呟く。
「まったく……。給金も,宿舎の食事も充分足りているはずなんだけど。あなたのその食い意地の悪さは相変わらずね」
「?」
コメカミを押さえるリディアに,デニスは首を傾げた。
「……いいえ,何でもないわ」
デニスやジョンのように,城に仕える若い兵士達は,城の敷地内に建てられている宿舎で共同生活をしているのだ。有事の際に思う存分力を発揮してもらえるよう,兵士には毎日,充分な量の食事が提供されているはずである。デニスには,それでは不足なのだろうか?
思えば彼は,リディアの知る限り幼い頃から食い意地が張っていた。
城での茶会に招いた時も,当時まだ七歳だったデニスは他の子供の分の(それも,自分よりも幼い子の,だ)菓子まで食べたがっていたし。三組の親子連れで湖のほとりまで遠出した時だって,当時十一歳で食べ盛りだった彼は,誰よりも弁当を食べたがっていた記憶がある。食欲旺盛なところは,十八歳になる今も健在のようだ。