レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。

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――カルロスを見送った後,リディアとデニスは四阿の長椅子に腰を下ろした。
すると,カルロスがいる間は一切(いっさい)口を挟まなかったデニスが,二人っきりになった途端に不機嫌になる。
「おい,リディア。昼間からずっと,あの王子に見蕩れてたろ!」
「あら,バレてたの?」
そりゃあ,あれだけ露骨(ろこつ)に見入っていたのだから、バレていて当然である。
「ゴメンなさいね。あの方の瞳があまりにもキレイで,あなたによく似ていたものだからつい……」
浮気心なんて欠片(カケラ)もなかったのだと,リディアは釈明した。そんな彼女を,デニスは簡単に許してしまう。
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