レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「わたしはもう,あなたと離れられないの。あなたしか愛せない」
――そしてまた,二人はいつものように口づけを交わした。それは日ごとに甘く,濃厚になっていく気がする。
抱擁の後,リディアは中庭の東側に建つ迎賓館二階の窓を見上げた。カルロスが滞在している部屋だ。
灯りは消えている。もう休んでいるのだろうか?
今日という日は,彼の生涯において忘れがたい日になるだろう。信頼していた伯父の本性(ほんしょう)を知った日。そして,その伯父を自らの手で追放するために,王になることを決意した日なのだから。
――それにしても。
「長い一日だったわ……」
リディアはぐったりと疲れたように,恋人であるデニスの肩にもたれかかった――。
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