レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
安堵の呟きを漏らした途端,リディアの両目からポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちた。
「……リディア?おい?」
そのまま堰を切ったように泣きじゃくる彼女を見て,デニスは戸惑う。
いつもは強く,気高く,凛々しいリディアの涙を,彼はもう何年も見たことがない。
幼い頃には,彼女もよく泣いていた。けれど,成長するにつれ,次期皇帝としての自覚が強くなった彼女は幼なじみのデニスやジョンにさえ,涙を見せなくなったのだ。
「デニスがケガをした時……,わたし……,デニスがいなくなったら,って考えて……。あなたが死んでしまったら……,わたしはもう,立ち直れないから……。だから,あなたが無事で,本当によかった……」
しゃくり上げながら,自分の心の中を吐露するリディアに,デニスは優しく相槌を打ち続けていた。
彼女がサルディーノを殺そうとしたのも,父や自分の制止を聞き入れなかったのも,頭に血が昇っていたせいだと思えば,デニスにも納得できた。――ただ,自分の声ではなくジョンの声で彼女が正気に戻ったことだけは面白くないけれど……。
「……リディア?おい?」
そのまま堰を切ったように泣きじゃくる彼女を見て,デニスは戸惑う。
いつもは強く,気高く,凛々しいリディアの涙を,彼はもう何年も見たことがない。
幼い頃には,彼女もよく泣いていた。けれど,成長するにつれ,次期皇帝としての自覚が強くなった彼女は幼なじみのデニスやジョンにさえ,涙を見せなくなったのだ。
「デニスがケガをした時……,わたし……,デニスがいなくなったら,って考えて……。あなたが死んでしまったら……,わたしはもう,立ち直れないから……。だから,あなたが無事で,本当によかった……」
しゃくり上げながら,自分の心の中を吐露するリディアに,デニスは優しく相槌を打ち続けていた。
彼女がサルディーノを殺そうとしたのも,父や自分の制止を聞き入れなかったのも,頭に血が昇っていたせいだと思えば,デニスにも納得できた。――ただ,自分の声ではなくジョンの声で彼女が正気に戻ったことだけは面白くないけれど……。