レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
一頻(ひとしき)り泣いてしまうと,リディアは指で(まぶた)()まっていた涙を拭った。
「――でもわたし,これで確信したわ。デニスへの想いは単なる幼なじみへの情愛なんかじゃなくて,本物の愛情なんだ,ってこと」
「え……?」
「お父さまやジョンや,他の親しい人が死んでしまっても,わたしはきっと泣くと思う。でも,もしもあなたが死んでしまったら,わたしはもう二度と立ち直れない。傷を負っただけでこんなに気を失うほどのショックを受けたのは,あなたを心から愛しているから」
リディアは今朝まで悩んでいたことを,初めてデニスに打ち明けた。自分の想いが,本当に恋心なのかどうか自信が持てなかったのだ,と。
そして,サルディーノには図星をつかれたから余計に悔しかったのだ,ということも。
「デニス,わたしはじきにお父さまから皇位を継いで、皇帝として即位することになると思う。その時には必ず,あなたに側にいてほしいの」
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