レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「それともう一つ,二人に伝えておくことがある。リディアの戴冠(たいかん)式の日に,同時にそなたら二人の婚礼の儀も執り行うこととする」
「「はい!」」
思いもよらぬ展開に,それも好ましい展開に,リディアとデニスは二人して顔を(ほころ)ばせる。二人は身分を越えて,夫婦として結ばれるのだ。リディア達にとって,これ以上の喜びはないだろう。
「デニスよ,そなたはもう宿舎に戻った方がよい。傷を負っているのだから,早めに休むがよかろう」
父は唐突に,デニスに命じた。他の使用人が聞けば,負傷した彼を(おもんばか)っての命令だと思うだろう。が,リディアは父が自分と父娘水入らずで話したいのだろうと察した。
「はい。陛下,お心遣い感謝致します。では失礼致します!――リディア,おやすみ」
退出していくデニスに,リディアは微笑みかける。そして,父娘二人だけになった寝室で,彼女のベッドの(ふち)に,娘と隣り合う形でイヴァンが腰を下ろした。
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