レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「実はな,リディア。私は此度の件で,皇帝としての自信を失ったのだよ」
「と,仰いますと?」
リディア自身,父が弱音を吐いている姿を見るのは久しぶりだ。彼女は瞬いた。
「私はサルディーノの企てを見抜くことができなかった。知ってからも,何も手を打たなかった。そなたは早い段階から,ヤツの本性を見破っていたのだろう?……私は,皇帝失格だな」
嘲るように,悲しげにイヴァンは笑う。
「そんなことありません。わたしだって,後悔しているんです。わたしが気を抜いていなければ,デニスはあの時ケガをせずに済んだのに……」
そのことを,デニスには言わなかった。言えば,彼は気にするだろうから。「お前のせいじゃない」と言って,彼女を責めずに自分の責任だと思ってしまうだろうから……。
「そなたのことを責める者などおるまい。あれが近衛兵の務めだ。あの傷は,名誉の負傷だ。そなたが気に病む必要はない」
「と,仰いますと?」
リディア自身,父が弱音を吐いている姿を見るのは久しぶりだ。彼女は瞬いた。
「私はサルディーノの企てを見抜くことができなかった。知ってからも,何も手を打たなかった。そなたは早い段階から,ヤツの本性を見破っていたのだろう?……私は,皇帝失格だな」
嘲るように,悲しげにイヴァンは笑う。
「そんなことありません。わたしだって,後悔しているんです。わたしが気を抜いていなければ,デニスはあの時ケガをせずに済んだのに……」
そのことを,デニスには言わなかった。言えば,彼は気にするだろうから。「お前のせいじゃない」と言って,彼女を責めずに自分の責任だと思ってしまうだろうから……。
「そなたのことを責める者などおるまい。あれが近衛兵の務めだ。あの傷は,名誉の負傷だ。そなたが気に病む必要はない」