レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
父は一言だけ答えた。
彼もまた,妻である皇后マリアンを亡くした時には涙を流したのだ。それも,まだ幼かった娘のリディアの前では泣きたくなかったので,一人でひっそりと泣いたものだ。だから,娘の気持ちは痛いほど分かる。
「――実はな,リディア。私がデニスに退室を命じたのは,弱音を聞かせたくなかっただけではないのだよ。次期皇帝であるそなただけに聞いてほしい話があってな」
「はあ……。何でしょうか?」
娘の護衛官であり,近々娘婿となるデニスにも聞かれたくない話とは何だろう?皇位継承に関する話だろうか?
「皇位を継承するにあたり,軍の人事をそなたに任せたいのだ。その件も合わせて,帝国議会には私から根回しをしておく」
「わたしが,人事を?」
リディアは目を瞠った。"人事が皇帝の務め"だということを,この時初めて知ったのだ。
彼もまた,妻である皇后マリアンを亡くした時には涙を流したのだ。それも,まだ幼かった娘のリディアの前では泣きたくなかったので,一人でひっそりと泣いたものだ。だから,娘の気持ちは痛いほど分かる。
「――実はな,リディア。私がデニスに退室を命じたのは,弱音を聞かせたくなかっただけではないのだよ。次期皇帝であるそなただけに聞いてほしい話があってな」
「はあ……。何でしょうか?」
娘の護衛官であり,近々娘婿となるデニスにも聞かれたくない話とは何だろう?皇位継承に関する話だろうか?
「皇位を継承するにあたり,軍の人事をそなたに任せたいのだ。その件も合わせて,帝国議会には私から根回しをしておく」
「わたしが,人事を?」
リディアは目を瞠った。"人事が皇帝の務め"だということを,この時初めて知ったのだ。