レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「そうね……」
赤面するリディアにキスをし,デニスはベッドから腰を上げる。
「おやすみ,リディア」
「……おやすみなさい」
まだ若干(じゃっかん)赤い顔のまま,リディアは微笑んだ。
こうして,一月後までのドキドキを秘めたまま,若い二人の婚約発表初日の夜は()けていった――。

****

――リディアが提案した軍の人事案は,ものの数日の議論の(のち)に帝国議会で承認され,正式な任命状が発行された。そこに(しる)された皇帝の名前は,リディア・エルヴァ―ト。つまり彼女の即位も,承認されたということだ。
リディアはその任命状を手に,軍の屋外演習場(えんしゅうじょう)へ赴いた。当然,デニスも同伴である。

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