レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「異論はございません。まあ,(わたし)が将軍に選ばれなかったのは,正直(くや)しくはありますがね。(せがれ)がリディア様の伴侶に選ばれただけで私は満足です。私はこれからも変わらず,あなたに忠誠を誓いますよ」
「ありがとう,お義父(とう)さま!」
リディアは歓喜(かんき)した。彼には恨まれこそすれ,これからも自分に忠義を尽くしてくれるとは思わなかったのだ。
彼となら損得なく,姻戚関係を築いていける気がする。
「――では,我々はそろそろ演習に戻らせて頂きます,姫様。――『姫様』とお呼びするのも,あと数週間ほどですね」
ジョンがしみじみと言った。
「ええ,そうね」
リディアは数週間後,正式に皇帝として即位する。そうなれば彼女は『姫様』ではなく『陛下』お呼ばれることになるのだ。
「俺に立派な任を与えて下さって,ありがとうございます。これからも父を全力で支え,リディア様のため,そしてこの国のために働かせて頂きます!――では,失礼致します」
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