レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
ステファン新将軍を始めとする兵士達が,演習に戻っていく。それを見届けてから,リディアとデニスも城に戻ることにした。
「あなたのお父様には,悪いことしちゃったわね……」
その道すがら,リディアはデニスに申し訳なさそうにポツリと漏らした。
「ああ,軍の幹部人事のことか?それなら,父さんは(なん)も気にしちゃいねえって。だからお前もそんなに落ち込むなよ」
「うん。だけど……」
しがらみや慣習に捉われることなく,忖度なしで幹部を選んだつもりだが,実際はどうだろう?自分の人選が果たして正しかったのかと,リディアは悩み始めたのだ。
「ガルシアどのったら,恨み節の一つも言わないであっさり引き下がるんだもの。余計に申し訳なくて」
「なに?思いっきり罵倒(ばとう)された方がよかったのか?」
「そういうわけじゃないけど」
ガルシアだって,まだ小娘(こむすめ)とはいえこれから仕える相手を罵倒するわけがない。
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