レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「父さんはさ,オレとリディアの結婚が決まっただけで嬉しんだよ。初めてオレをお前に引き合わせた時からずっと,お前のこと娘みたいに思ってたらしいからさ」
「そっか……」
デニスもジョンも,リディアと同じくひとりっ子である。女の子に恵まれなかったから余計に,義理の娘ができることが嬉しくて仕方ないのだろう。――ただし,同時に自分が仕えるべき主にもなるのだが。
三人が初めて出会った頃はまだ幼く,三人とも名前で呼び合う「友人」の関係だった。身分も関係なく,一緒に遊んでいた。
十歳の頃からジョンとデニスは本格的に剣術を習い始め,思春期にさしかかった頃にはジョンから「姫様」と呼ばれるようになり,徐々(じょじょ)に距離を置かれるようになっていった。
リディアがデニスを異性として意識するようになったのも,ちょうどその頃だ。だからこそ,彼女はジョンではなくデニスから剣術と武術の特訓を受けることにしたのだ。
そして成人した今――。三人の関係は大きく変わった。主と臣下であり,恋人同士であり,友人でもある。デニスとジョンは,リディアを巡ってのライバル同士でもあった。
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